冬虫夏草とは?
「冬虫夏草」をご存じでしょうか。古くから東洋で珍重されてきた希少な菌類の一種です。
天然の冬虫夏草は限られた高地でしか採れず、中国では皇帝をはじめ、ごく限られた人々しか口にできない貴重な滋養素材だったと伝えられています。
冬虫夏草菌は、ヒマラヤや青海チベット高原など、寒冷な高地の土中で暮らす「ガ」の幼虫に寄生します。菌は幼虫から栄養を得ながら成長し、春になって気温が上がると、幼虫の体から一本の草のような子実体を地上へ伸ばします。この姿から、「冬は虫、夏は草」という意味の名が付けられました。昆虫と菌類が織りなす、自然界でも非常に珍しい生命の営みです。
伝統的な滋養素材を、現代科学で読み解く
冬虫夏草は、古くから高級な滋養素材として珍重されてきました。なぜ人々は冬虫夏草を大切にしてきたのか。その理由を科学的に解き明かすため、含有成分についての研究が進められています。
2017年に発表された研究では、冬虫夏草から、アデノシンなどの核酸関連物質に加え、9種類の必須アミノ酸を含む17種類のアミノ酸が検出されました。また、冬虫夏草由来成分と抗酸化作用などとの関係についても、基礎研究が重ねられています。Koらの研究(PLOS ONE、2017年)
もちろん、基礎研究の成果を、そのまま人に対する治療効果や健康効果として捉えることはできません。それでも、冬虫夏草が長い歴史のなかで大切にされてきた理由の一端が、現代科学によって少しずつ解き明かされつつある、といえるかもしれません。
温暖化によって、さらに希少な存在に
天然の冬虫夏草は、標高の高い寒冷な地域に生息するため、気候変動の影響を受けやすい存在です。近年の気温上昇や、降雪量・氷河の減少に伴い、収穫量も減少していると報じられています。
最大の産地とされる中国・青海省の高原では、気温の上昇幅が一時期、世界平均の約3倍に達したともいわれます。冬虫夏草を求め、採集者が標高4,500メートルまで登った例もあります。増え続ける需要に気候変動などの影響が重なり、天然の冬虫夏草はますます希少なものになっています。ロイター「冬虫夏草に迫る温暖化の脅威」
「食べて養う」そして「肌を養う」へ
冬虫夏草は 東洋の「養生」を象徴する素材の一つです。「養生」とは、「不調が起きてから対処するだけでなく、日々の食事や健やかな生活を通じて、心身の状態を整える」という考え方です。その日の体調や季節に合わせて身体を養うために食べる、という発想が、アジアの食文化にはあるように思います。
日々の小さな変化に目を向け、本来の健やかな状態を保つ。健康も美しさも、そのような日々の積み重ねによって養われていく―― これこそ、東洋で古くから受け継がれてきた「養生」の知恵なのではないでしょうか。
冬虫夏草は長らく、「食べて身体を養う」ために用いられてきました。現代では食の領域を越え、スキンケアにも取り入れられ始めています。たとえば、冬虫夏草エキスを保湿成分としてスキンケア製品に配合し、「日々、肌を健やかに養う」という形に発展させたものです。
肌は、紫外線や乾燥、気温の変化など、外界からの影響を毎日受けています。それと同時に、睡眠不足やストレス、食生活、加齢といった身体の内側の変化も映し出します。
とくにミドル世代の肌の美しさは、日々をどのように過ごし、どのようなセルフケアを積み重ねているかによって左右されます。だからこそ、「即効性のある何か」だけを求めるのではなく、食事や生活習慣によって身体の内側を整え、毎日のスキンケアによって外側から肌を守ることが大切だと、私は考えます。
冬虫夏草が私たちに伝えてくれるのは、希少な素材の物語だけではありません。健康も美しさも、一度に手に入れるものではなく、毎日少しずつ養っていくもの――。東洋から受け継いだその知恵が、現代の科学と出会い、これからのスキンケアへとつながっていくことに、私は大いに期待しています。
アオハルクリニック院長
小柳えりこ
